株式譲渡と事業譲渡の違い|整備工場のM&Aで選ぶべきスキーム

M&A実務 引き継いでもらいやすい会社づくり 2026.08.05 公開

M&Aの手法は複数ありますが、中小企業では株式譲渡と事業譲渡のいずれかになるのが一般的です。この選択は、税金だけでなく許認可や従業員の扱いにも影響します。

2つの違いを一覧で

項目株式譲渡事業譲渡
譲渡するもの会社の株式(会社ごと)事業に関わる資産・負債を個別に
売主株主(個人)法人
税負担個人の譲渡所得 約20.315%法人税等+個人へ移す際の課税
許認可法人が存続するため原則そのまま買い手側で取得が必要な場合あり
従業員雇用契約はそのまま継続個別に転籍の同意が必要
取引契約原則そのまま継続個別に相手方の同意が必要
簿外債務買い手が引き継ぐリスクあり引き継ぐ範囲を限定できる

自動車業界で決定的なのは「許認可」

POINT認証工場・指定工場の資格は、事業場と人員に紐づく許認可です。株式譲渡であれば法人が存続するため継続しますが、事業譲渡では買い手が新たに取得する必要が生じる場合があります。

指定工場の新規取得には設備・人員の要件を満たしたうえで審査期間が必要です。この空白期間に車検業務が止まることは、事業上大きな損失になります。整備工場のM&Aで株式譲渡が選ばれやすいのは、この理由が大きく影響しています。

古物商許可、産業廃棄物の取扱いに関する届出なども同様に確認が必要です。

それでも事業譲渡が選ばれる場面

  • 買い手が簿外債務・偶発債務のリスクを避けたい場合
  • 複数事業のうち、整備部門だけを譲渡したい場合
  • 法人を手元に残して不動産管理などに使いたい場合
  • 株主が分散していて、株式を集約できない場合

売主にとっての手取りの違い

株式譲渡は個人の分離課税で約20.315%。事業譲渡は法人段階で課税されたうえ、個人へ移す際にも課税されます。同じ譲渡価格なら、株式譲渡のほうが手取りは多くなるのが一般的です。

実際には、株主構成、不動産の所有形態、簿外債務の有無、許認可の状況を踏まえて決めます。スキームの選択は交渉の早い段階で方向性を固めておくべき論点です。

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