会社を売った後の生活費はどう確保する|売却後の資金設計
譲渡が成立したあと、多くの経営者が直面するのが「毎月の収入がなくなる」という現実です。役員報酬という定期収入が止まるインパクトは、想像より大きいものです。
収入の柱は3つに整理できる
1. 譲渡対価
株式譲渡であれば、譲渡対価は個人の手取りとして残ります。ただし後述の税金が引かれるため、額面がそのまま使えるわけではありません。
2. 役員退職金
譲渡にあわせて役員退職金を支給する設計は広く使われています。退職所得は勤続年数に応じた控除があり、さらに課税対象が2分の1になるため、同じ金額を譲渡対価として受け取るより手取りが増えるケースがあります。
POINT譲渡対価と役員退職金の配分は、税負担が変わる重要な論点です。買い手にとっても損金算入の観点で意味があるため、交渉のなかで設計します。
3. 公的年金
受給開始年齢と繰下げ受給の選択によって、生涯で受け取る総額が変わります。譲渡対価がある場合、年金の受給を繰り下げて増額させるという設計も選択肢に入ります。
「使い切らない」設計を先に決める
まとまった金額が一度に入ると、使い方の判断が難しくなります。あらかじめ次のように区分しておくと管理しやすくなります。
- 生活資金:今後の想定生活費 × 年数。まず確保する
- 予備資金:医療・介護・住宅の修繕など、想定外に備える枠
- 相続を意識した資金:次世代へ渡す前提で、納税資金も含めて考える枠
- 余剰資金:上記を確保したうえで、はじめて運用や趣味に回せる枠
自宅や工場の不動産をどう扱うか
工場の土地・建物を個人で所有し、法人へ賃貸しているケースは非常に多くあります。この場合、株式を譲渡しても不動産は手元に残り、賃料収入が引退後の安定収入になります。一方で、買い手が不動産ごとの取得を希望する場合もあり、条件交渉の論点になります。
不動産を残すか売るかは、引退後の収入設計と相続の両面から決める必要があります。譲渡の条件を固める前に方針を決めておくことをおすすめします。